用語解説
NPB Scholar で使う主要指標を、式、読み方、優秀さの目安、相関の見方までまとめたページです。上の用語一覧から各説明へ移動できます。
用語一覧
用語名だけを並べています。知りたい単語を押すと、ページ内の詳細説明へ移動します。
総合評価とWAR
WAR
WAR は Wins Above Replacement の略で、代替可能な選手と比べてどれだけ勝利に近い価値を積み上げたかを見る総合指標です。打率、防御率、奪三振数のような単独の成績ではなく、打撃、投球、出場量、ポジション、球場環境などを勝利数に近い単位へそろえて評価するための考え方です。
WAR の便利な点は、タイプが違う選手を同じ単位で比較しやすいことです。長打力で価値を作る打者、出塁で価値を作る打者、イニングを多く投げる先発、短いイニングを高品質に抑える救援は、表面成績だけでは比較しにくいですが、WAR はそれぞれの価値を勝利への貢献量として並べることを目指します。
目安として、シーズンで 2 WAR 前後ならレギュラー級、4 WAR 前後ならかなり優秀、6 WAR 以上ならタイトル級またはMVP級のシーズンと見られることが多くなります。NPBは143試合制なので、162試合のMLB目安をそのまま絶対視せず、リーグ内順位や出場機会と一緒に見るのが自然です。
WAR = Replacement 水準に対する得点価値 ÷ Runs Per WinWAR は便利ですが、1桁小数の差を過度に大きく扱う指標ではありません。0.1や0.2の差より、同じ役割の選手の中でどの層にいるか、複数年で同じ傾向が続くかを見るほうが実用的です。
Bat WAR
Bat WAR は、打者の価値を勝利数に近い単位へ換算した指標です。中心になるのは打席あたりの攻撃価値で、そこに出場量、守備位置ごとの補正、球場環境、replacement の考え方を加えて、合計値として表します。
打撃部分では wOBA を得点価値へ変換する考え方を使います。単打、二塁打、本塁打、四球を同じ重みで足すのではなく、それぞれが得点にどれだけ近づくかを反映したうえで、リーグ平均との差を打席数で積み上げます。
Batting Runs = ((wOBA - League wOBA) ÷ wOBA_scale) × PABat WAR = (Batting Runs + Positional Runs + Park Adjustment + Replacement Runs) ÷ Runs Per WinBat WAR は率だけではなく量も評価します。OPSやwOBAが高くても打席が少なければ合計値は伸びにくく、平均を少し上回る程度でも多くの打席で出場し続ければ価値は積み上がります。打撃成績の見栄えとチームへの合計貢献を分けて考えるための指標です。
NPB Scholar での Bat WAR は、打撃価値、ポジション補正、球場補正、replacement を中心にした近似です。守備範囲、送球、走塁のような詳細価値を完全に入れた総合WARとは読まず、打撃中心の勝利貢献を見る指標として扱うのが適切です。
Pit WAR
Pit WAR は、投手の価値を勝利数に近い単位へ換算した指標です。考え方の中心は、投手が比較的コントロールしやすいイベントから失点見通しを作り、そこに投球回、球場環境、役割ごとのreplacementを組み合わせることです。
NPB Scholar の Pit WAR は、通常の FIP ではなく ifFIP を土台にします。ifFIP は本塁打、四死球、奪三振に加えて、内野フライを三振に近いアウトとして扱います。内野フライは長打になりにくく、守備や球場の偶然性より投手の打球管理能力に近い面があるため、通常FIPより少し投球内容を細かく見ます。
ifFIP = ((13 × HR) + (3 × (BB + HBP)) - (2 × (K + IFFB))) ÷ IP + ifFIP constantFIPR9 = ifFIP + (League RA9 - League ERA)Park Adjusted FIPR9 = FIPR9 ÷ Park FactorRAA/9 = League FIPR9 - Park Adjusted FIPR9Pit WAR = ((RAA/9 ÷ Runs Per Win) + Replacement Wins Per Game) × (IP ÷ 9)式の読み方は、まず ifFIP で投手の失点見通しを作り、リーグ全体の失点環境へ合わせ、球場の影響をならし、リーグ平均よりどれだけ失点を防いだかを 9イニングあたりで求めます。そのうえで、1勝に相当する得点数で割り、投球回数とreplacementを掛け合わせます。
Pit WAR は投球内容と投球量の両方で伸びます。短い登板で圧倒的な救援投手は率の評価が高くても合計WARは伸びにくく、先発投手は一定以上の品質で多くのイニングを投げるほど価値が積み上がります。先発と救援を同じ数字だけで断定せず、役割、登板数、イニング、球種構成も合わせて見ると理解しやすくなります。
replacement
replacement は、代替可能な選手水準を表す考え方です。平均選手ではなく、控え、昇格候補、短期補強で置き換えられる水準を基準にするため、リーグ平均を少し下回る選手でも、十分な出場機会をこなせばプラスのWARを持つことがあります。
この考え方は、野球チームが実際に直面する意思決定に近いものです。レギュラーを失ったときに、完全な平均選手をすぐ用意できるとは限りません。代替水準との差を測ることで、出場機会を安定して埋める価値も評価に含められます。
Runs Per Win
Runs Per Win は、何点分の得点価値が1勝に相当するかを表す換算値です。得点環境が高いリーグでは1勝に必要な得点差も大きくなりやすく、投高打低の環境では小さくなりやすい性質があります。
WAR は最終的に勝利数に近い単位で表示されますが、内部ではまず得点価値を作ります。Runs Per Win は、その得点価値を勝利価値へ変換するための橋渡しです。
パークファクター
パークファクターは、球場が得点や本塁打に与える影響をならすための補正です。球場によってフェンス距離、フェンス高さ、ファウルゾーン、風、屋外か屋内か、芝や人工芝などが異なり、同じ打球でも結果が変わりやすくなります。
打者有利な球場を本拠地にする選手の成績は、球場の助けを少し差し引いて見る必要があります。逆に投手有利な球場で打つ選手や、打者有利な球場で投げる投手は、表面成績より内容が良い可能性があります。パークファクターは、その環境差を完全ではないにせよ同じ土俵に近づけるための補助線です。
ポジション補正
ポジション補正は、守備位置ごとの負担や希少性を打者評価へ反映する考え方です。捕手、遊撃手、二塁手、三塁手、中堅手のように守備負担が大きいポジションと、一塁手、左翼手、指名打者のように打撃での貢献をより強く求められるポジションでは、同じ打撃成績の価値が変わります。
たとえば同じOPSでも、遊撃手が残した場合と一塁手が残した場合では、チーム編成上の希少性が違います。ポジション補正は、その差をWARへ組み込むために使います。個々の守備のうまさを直接測るものではなく、守備位置が持つ平均的な負担を反映する考え方です。
打撃指標
AVG
AVG は打率です。安打数を打数で割った、もっとも伝統的な打撃指標のひとつです。単純で直感的に分かりやすく、打者がどれだけヒットを打ったかを見るには今でも有用です。
AVG = H ÷ ABただし、打率は四球を評価せず、単打と本塁打を同じ1安打として扱います。そのため、出塁能力や長打力を含めた攻撃価値を見るには OBP、SLG、OPS、wOBA と組み合わせる必要があります。.300 は見栄えのする打率ですが、四球が少なく長打も少ない場合、攻撃価値は思ったほど高くないことがあります。
OBP
OBP は出塁率です。打者がアウトにならずに塁へ出る能力を見る指標で、安打に加えて四球と死球を評価します。得点はアウトを消費せずに走者を増やすことから始まるため、OBPは打撃評価の土台として非常に重要です。
OBP = (H + BB + HBP) ÷ (AB + BB + HBP + SF)一般的には .320 前後が平均的、.350 を超えると優秀、.380 を超えるとかなり高水準です。長打力が突出していなくても、高いOBPを安定して残せる打者は打線の得点期待値を底上げします。
SLG
SLG は長打率です。塁打数を打数で割り、ヒットの質を反映します。単打は1塁打、二塁打は2塁打、三塁打は3塁打、本塁打は4塁打として数えるため、打率より長打力を強く見られます。
SLG = TB ÷ ABTB = 1B + (2 × 2B) + (3 × 3B) + (4 × HR).400 前後なら一定の長打力があり、.500 を超えると強打者の領域です。ただし四球を評価しないため、出塁能力を見るにはOBPやwOBAと合わせる必要があります。
OPS
OPS は出塁率と長打率を足した指標です。出塁する力と長打を打つ力を一つにまとめるため、計算が簡単で攻撃力の大まかな把握に向いています。
OPS = OBP + SLG一般的な目安では、.700 前後が平均帯、.800 以上が優秀、.900 以上がリーグ上位、1.000 以上はエリート級です。2026年6月19日時点のNPB Scholar打者データでは、100打席以上の中央値が .673、上位25%が .752、上位10%が .837、上位5%が .914 でした。リーグの得点環境によって、同じOPSの意味は少し変わります。
OPSの弱点は、OBPとSLGを同じ重みで足してしまうことです。実際には出塁の価値と長打の価値は単純に同じではありません。より得点価値に近い評価をしたい場合は wOBA を見ます。
ISO
ISO は純粋な長打力を見やすくする指標です。長打率から打率を引くことで、単打を除いた追加塁打の力を取り出します。
ISO = SLG - AVG.140 前後が平均的な目安、.170 以上が良好、.200 以上が強打者、.250 以上ならエリート級の長打力と見られます。打率が低くてもISOが高い打者は、三振や凡退が多い一方で一振りの得点価値が大きいタイプです。
wOBA
wOBA は Weighted On-Base Average の略で、打席イベントを得点価値に近い重みで合成した打撃指標です。OPSよりも、四球、単打、二塁打、三塁打、本塁打の価値差を自然に扱える点が大きな強みです。
wOBA = (wBB × uBB + wHBP × HBP + w1B × 1B + w2B × 2B + w3B × 3B + wHR × HR) ÷ (AB + BB - IBB + SF + HBP)式に出てくる wBB、w1B、wHR などは各イベントの重みです。本塁打は単打より得点価値が高く、四球は単打より価値が低い、といった現実に近い差を入れることで、打者の攻撃価値を1打席あたりの形で表します。
一般的な目安では .320 前後が平均、.340 以上が優秀、.370 以上が非常に優秀、.400 以上はエリート級です。2026年6月19日時点のNPB Scholar打者データでは、100打席以上の中央値が .300、上位25%が .333、上位10%が .361、上位5%が .388 でした。NPBの得点環境では、MLBの一般目安より少し低い数字でも上位に入ることがあります。
xwOBA
xwOBA は expected wOBA の略で、実際の安打結果ではなく、打球内容や打席内容から期待されるwOBAを推定する指標です。強い打球を良い角度で打ったのに野手正面だった、詰まった打球がヒットになった、といった結果の揺れを少しならして見るために使います。
実際のwOBAよりxwOBAが高い打者は、内容のわりに結果がまだ出ていない可能性があります。逆にwOBAがxwOBAを大きく上回る場合は、結果が上振れしている可能性を考えます。ただし、選手によって打球方向、走力、球場、守備シフトへの適応が違うため、差がすべて運だけを意味するわけではありません。
目安はwOBAに近く、.320 前後が平均的、.340 以上が優秀、.370 以上がかなり高水準です。2026年6月19日時点のNPB Scholar打者データでは、100打席以上の中央値が .300、上位25%が .328、上位10%が .352、上位5%が .369 でした。
wOBA_scale
wOBA_scale は、wOBAを得点価値へ変換するためのスケールです。wOBAは出塁率に近い見た目の指標ですが、WARの計算では得点数へ換算する必要があります。その変換に使うのがwOBA_scaleです。
wRAA = ((wOBA - League wOBA) ÷ wOBA_scale) × PAwOBA_scaleそのものは、選手を順位付けするための指標ではありません。wOBAと得点価値、さらにWARをつなぐ部品です。得点環境が変わると、同じwOBA差がどれだけ得点差に相当するかも変わるため、リーグ環境に合わせて扱います。
BABIP
BABIP は Batting Average on Balls In Play の略で、本塁打を除くインプレー打球がどれだけ安打になったかを見る指標です。打者の場合は打球の質、足の速さ、打球方向、守備位置、運の影響を受けます。投手の場合は被打球管理、守備、球場、偶然性の影響が混ざります。
BABIP = (H - HR) ÷ (AB - K - HR + SF)極端に高いBABIPや低いBABIPは、次の期間で揺り戻す可能性があります。ただし、強い打球を多く打つ打者、足が速い打者、ゴロを多く打たせる投手など、選手の特徴によって自然な水準は変わります。
K% / BB% / Chase%
K% は打席に占める三振の割合、BB% は四球の割合、Chase% はストライクゾーン外の球に手を出した割合です。これらは結果よりも打席プロセスに近い指標です。
打者なら、K%が低くBB%が高いほどゾーン管理が良い傾向があります。Chase%が低い打者はボール球を見極める能力が高く、四球や好カウントを作りやすくなります。一方で、長打力のある打者はK%が高くても十分な攻撃価値を作れる場合があります。
投手目線では、K%が高くBB%が低いほど安定した失点抑止につながりやすく、K-BB%は投手評価で特に強い基礎指標になります。
HardHit% / Barrel% / SweetSpot%
HardHit% は打球速度 152.9km/h 以上の打球割合、Barrel% は長打になりやすい速度と角度の組み合わせに入った打球の割合、SweetSpot% は安打や長打になりやすい打球角度帯に入った割合です。どれも打球の質を見るための指標です。
HardHit%が高い打者は打球速度の面で強く、Barrel%が高い打者は強さと角度の両方がそろっています。SweetSpot%はライナー性や適切な角度の打球をどれだけ作れているかを見る補助線です。投手の場合はこれらを低く抑えるほど、危険な被打球を減らしていると読めます。
| 指標 | 平均帯の目安 | 優秀 | エリート | NPB Scholar 100打席以上の上位目安 |
|---|---|---|---|---|
| OPS | .700前後 | .800以上 | 1.000以上 | 上位10% .837、上位5% .914 |
| wOBA | .320前後 | .340以上 | .400以上 | 上位10% .361、上位5% .388 |
| xwOBA | .320前後 | .340以上 | .370以上 | 上位10% .352、上位5% .369 |
| ISO | .140前後 | .170以上 | .250以上 | リーグ環境と球場差を強く受ける |
| Bat WAR | 1.0前後で一定の戦力 | 2.0以上で主力級 | 4.0以上で上位級 | 上位10% 1.83、上位5% 2.22 |
投手指標
ERA
ERA は防御率です。9イニングあたりの自責点を表します。もっとも広く使われる投手成績のひとつで、実際にどれだけ点を取られたかを直感的に把握できます。
ERA = ER × 9 ÷ IPERAは結果指標です。守備、球場、走者を残して降板した後の救援結果、打球の落ち方などの影響を受けます。そのため、投手の実力を見るときはFIP、xFIP、xwOBA、K-BB%、Stuff+、Location+と合わせて見るのが基本です。
xERA
xERA は、被打球の質や奪三振、四球などから期待される防御率を推定する指標です。実際の防御率よりも、投手の内容がどの程度失点につながりやすかったかを見るために使います。
ERAよりxERAが低い投手は、内容のわりに失点が多かった可能性があります。逆にERAよりxERAが高い投手は、結果が内容より良く出ている可能性があります。ただし、投手の打球管理能力、守備、球場、継投の影響もあるため、差をそのまま幸運や不運だけに変換するのは危険です。
WHIP
WHIP は1イニングあたりに許した四球と安打の数です。走者をどれだけ出したかを簡潔に見る指標で、低いほど安定して走者を抑えていると読めます。
WHIP = (BB + H) ÷ IP一般的には 1.30 前後が平均帯、1.10 を切ると優秀、1.00 を切ると非常に優秀です。ただし、安打の部分は守備や打球運の影響を受けるため、FIPやK-BB%と合わせて見る必要があります。
FIP
FIP は Fielding Independent Pitching の略で、本塁打、四死球、奪三振を中心に投手の失点見通しを評価する指標です。守備やインプレー打球の落ち方に左右されやすいERAを補助するために使います。
FIP = ((13 × HR) + (3 × (BB + HBP)) - (2 × K)) ÷ IP + FIP constant低いほど良い指標です。三振を多く取り、四球を少なくし、本塁打を抑える投手はFIPが良くなります。2026年6月19日時点のNPB Scholar投手データでは、20イニング以上の中央値が 3.03、上位25%の目安が 2.48以下、上位10%が 2.08以下でした。NPBの得点環境では、2点台前半ならかなり優秀、1点台ならエリート級と見てよい水準です。
FIPは非常に有用ですが、投手のすべてを説明する指標ではありません。ゴロを打たせる力、ポップフライを打たせる力、弱い打球を作る力、走者を背負った場面の投球などは、FIPだけでは拾いきれません。
ifFIP
ifFIP は、FIPに内野フライを組み込んだ考え方です。内野フライはほぼアウトになりやすく、長打リスクが低い打球です。そのため、奪三振ほどではないにせよ、投手が失点を防ぐうえで価値の高いイベントとして扱います。
ifFIP = ((13 × HR) + (3 × (BB + HBP)) - (2 × (K + IFFB))) ÷ IP + ifFIP constantifFIPも低いほど良い指標です。三振を取れる投手、本塁打を抑える投手、四球を出さない投手に加えて、打者に内野フライを打たせる投手が評価されやすくなります。NPB Scholar の Pit WAR はこのifFIPを中心に組み立てています。
xFIP
xFIP は、FIPの本塁打部分をリーグ平均の本塁打率に近づけて見る指標です。本塁打は投手の責任が大きい一方で、球場、風、フェンス、サンプルの小ささによって短期的に大きく揺れます。xFIPはその揺れをならし、三振、四球、フライ傾向から見た失点見通しを作ります。
FIPよりxFIPが良い投手は、本塁打が多めに出ている可能性があります。逆にFIPよりxFIPが悪い投手は、本塁打を抑えられている結果が続くか確認が必要です。被打球の質を見られる場合は、Barrel%、HardHit%、xwOBAも合わせると判断しやすくなります。
K-BB%
K-BB% は奪三振率から与四球率を引いた指標です。投手の基礎能力を見るうえで非常に強い補助線になります。
K-BB% = K% - BB%三振を取れる投手は打球にされる前にアウトを取れます。四球を出さない投手は余計な走者を増やしません。その両方を一つにまとめるため、K-BB%はFIPやxFIPと相性が良い指標です。2026年6月19日時点のNPB Scholar投手データでは、20イニング以上の中央値が 14.7%、上位25%が 18.3%、上位10%が 21.5%、上位5%が 24.5%でした。
Whiff% / CSW%
Whiff% はスイングに対する空振りの割合です。球威、変化、球種設計、配球、打者との相性が反映されます。高いほど空振りを奪う力が強く、三振能力につながりやすい指標です。
CSW% は Called Strike + Whiff の略で、見逃しストライクと空振りを合計した割合です。投手が打者に有利な判断をさせなかった投球の割合に近く、球質だけでなく投球位置やカウント作りも反映します。
2026年6月19日時点のNPB Scholar投手データでは、20イニング以上のWhiff%中央値が 24.1%、上位10%が 31.6%、CSW%中央値が 27.8%、上位10%が 30.8%でした。Whiff%が高い投手はStuff+と結びつきやすく、CSW%はStuff+とLocation+の両方に関係しやすい指標です。
Run Value
Run Value は、あるプレーや投球が得点期待値をどれだけ変えたかを表す考え方です。たとえば、カウント0-0からストライクを取ると投手側に有利になり、四球や長打を許すと打者側に有利になります。その変化を得点の単位で表します。
NPB Scholarでは投手側の文脈で、失点を防ぐ方向をプラスとして表示する場面があります。指標ごとに高いほうが良いか低いほうが良いかが異なるため、表の見出しやツールチップを確認しながら読むのが安全です。
PRV / FRV / BRV / ORV
PRV は Pitching Run Value の略で、投球全体の得点価値をまとめたものです。FRV は fastball 系、BRV は breaking ball 系、ORV は offspeed 系のRun Valueを表します。球種グループごとに、どの領域で価値を作っているかを見るために使います。
たとえば、全体のPRVが高くてもFRVだけが大きく、BRVやORVが低い投手は、速球に依存した構成かもしれません。逆にStuff+が突出していない投手でも、複数球種で安定してプラスを作れていれば、配球やコマンドを含めた総合力が高い可能性があります。
| 指標 | 良い方向 | 中央値 | 優秀の目安 | 上位級の目安 |
|---|---|---|---|---|
| FIP | 低い | 3.03 | 2.48以下 | 2.08以下 |
| wOBA allowed | 低い | .271 | .252以下 | .216以下 |
| xwOBA allowed | 低い | .280 | .256以下 | .231以下 |
| K-BB% | 高い | 14.7% | 18.3%以上 | 21.5%以上 |
| Whiff% | 高い | 24.1% | 28.1%以上 | 31.6%以上 |
| CSW% | 高い | 27.8% | 29.6%以上 | 30.8%以上 |
| Pit WAR | 高い | 0.5 | 1.0以上 | 1.5以上 |
守備・走塁指標
Fielding Run Value / FRV
Fielding Run Value は守備全体の得点価値です。守備範囲、送球、併殺、捕手守備などを得点単位へそろえ、守備でどれだけ失点を防いだかを見るために使います。
表示上は FRV と略すことがありますが、投手ページの FRV は Fastball Run Value を意味します。守備ランキングや打者ダッシュボードの守備欄では Fielding Run Value として扱います。
FRV = INF/OF守備得点 + 捕手守備得点 + 外野送球得点などsOAA
sOAA は scholar Outs Above Average の略で、守備位置ごとの期待アウト率と実アウト率の差から、どれだけアウトを増やしたかを推定する守備範囲指標です。アウト増加はプレー数の単位、得点換算はそれを得点価値へ直した値です。
対象打球、実アウト率、期待アウト率、成功率差を一緒に見ると、量で稼いだのか、期待より難しい打球を処理したのかを分けて確認できます。
OFArmR
OFArmR は Outfield Arm Run Value の略で、外野送球によって走者の追加進塁をどれだけ防いだかを得点換算した指標です。進塁、送球アウト、進塁阻止、進塁機会、進塁試行率、期待試行率を組み合わせて見ます。
捕殺は、送球などでアウト成立を補助した野手に記録される守備記録です。OFArmRと合わせると、外野送球が走者の進塁判断とアウト成立にどう関わったかを確認できます。
捕手守備
捕手守備は、フレーミング、盗塁阻止、ブロッキングを合わせた捕手の守備得点です。フレーミングは判定をストライク側に動かした価値、盗塁阻止は盗塁企図に対する送球価値、ブロッキングは暴投や捕逸につながる進塁を防いだ価値を見ます。
捕手は他の守備位置と評価対象が違うため、INF/OFの範囲・送球とは分けて表示します。
Baserunning Run Value / BRV
Baserunning Run Value は走塁全体の得点価値です。盗塁得点と追加進塁による得点価値を合わせ、走者としてどれだけ得点期待を増やしたかを表します。
盗塁、盗塁死、盗塁企図、成功率は盗塁面、進塁機会、進塁成功、走塁死、ホールドは打球後の進塁面を見る項目です。
XBRunningR
XBRunningR は Extra Bases Running Run Value の略で、安打や外野への打球で追加進塁できたかを得点換算した走塁指標です。盗塁とは別に、打球後の一塁から三塁、二塁から本塁などの進塁判断と結果を評価します。
Stuff+、Location+、Pitching+
Stuff+
Stuff+ は、投球の物理的な強さを100基準で表す指標です。ここでいう強さは、単に球速が速いという意味ではありません。球速、回転、変化量、球種ごとの標準的な動きからのズレ、同じ投手の速球との速度差や変化差を合わせて、打者にとって扱いにくい球かどうかを評価します。
Stuff+ が見たいのは、投げた場所やカウントの良し悪しではなく、その球が持つ素材としての価値です。真ん中に投げた失投でも、球速や変化の面で優れた球ならStuff+は高く出ることがあります。逆に、低めいっぱいに決まった球でも、物理的な球質が平均的ならStuff+は大きく上がりません。
主に使う特徴量
Stuff+ は、投球単位の物理特徴を球種ごとに整理して使います。代表的には、球速、回転数、投手の腕側へ正規化した横変化、縦変化、横変化と縦変化を合わせた変化量の大きさ、球速あたりの回転、球速あたりの変化量を使います。さらに、その投手の主な速球を基準にした球速差、回転差、横変化差、縦変化差を加えます。
腕側へ正規化した横変化を使うのは、右投手と左投手を同じ意味で比較するためです。右投手の腕側変化と左投手の腕側変化を、単純な左右の符号だけで別物にしないようにします。速球との差分を使うのは、単独の球の形だけでなく、投手の球種設計の中でどれだけ速度差や変化差を作れているかを見るためです。
モデルの考え方
モデルは、球種ごとに物理特徴を入力し、投球の価値に結びつきやすい形を学習する勾配ブースティング系の回帰モデルを土台にしています。具体的にはLightGBM系のモデルで、外れ値に強いスケーリングをした特徴量を使い、球種ごとの分布に合わせて100基準へ正規化します。
学習では、MLBで観測できるStuff+系の基準値、空振り、CSW、run valueとの整合性を見ます。空振りやCSWは球質のプロセスを表しやすく、run valueやwOBAは最終的な失点抑止に近い結果を表します。Stuff+は結果を直接なぞるだけの指標ではなく、結果に先行しやすい物理的な球質を取り出すことを重視します。
読み方はシンプルです。100が平均付近、105を超えると良好、110を超えるとかなり強い球質、115以上ならエリート級の目安です。NPBの現在の分布では上位5%が109.7前後なので、108から110でも十分に上位級です。
Location+
Location+ は、投球位置の価値を100基準で表す指標です。単なるストライク率ではありません。ボールカウント、ストライクカウント、投手の左右、打者の左右、球種、ゾーン内外、ゾーンに対する高さや横位置を使い、その場面でそこへ投げたことがどれだけ有利な結果につながりやすいかを評価します。
Location+ の重要な思想は、球質情報を入れずに投球位置だけの価値を見ることです。球速、回転、変化量、リリース位置、エクステンションのようなStuff系の情報は使いません。これにより、球が強かったから抑えたのか、場所が良かったから抑えたのかを分けて見やすくなります。
主に使う特徴量
Location+ では、カウント、投手左右、打者左右、球種、ホームベース上の横位置と高さ、横位置の絶対値、投手の腕側へ正規化した横位置、ストライクゾーンの下端、上端、中央に対する相対的な高さ、ゾーン内外のフラグ、ゾーン高を使います。
同じ低めでも、打者のストライクゾーンの下端に近い低めなのか、ゾーンから大きく外れた低めなのかで意味が違います。そのため、絶対的なplate_zだけでなく、打者ごとのゾーンに対する相対的な高さを使います。横位置も、投手の腕側、グラブ側、ベース中央からの距離を分けることで、同じ座標でも投手左右や打者左右による意味の違いを扱います。
モデルの考え方
Location+ は、位置と状況だけから、Ball、Called Strike、Swinging Strike、Foul、BIP などの結果分布を推定する多クラス分類モデルを土台にします。モデルはLightGBM系の勾配ブースティングを使い、各クラスの確率を出したうえで、カウント別の得点期待値に変換します。最終的には、投手にとって良い位置ほど高くなる100スケールへそろえます。
BIPの扱いは特に重要です。打球結果をそのまま入れると、守備、球場、打球の偶然性をLocation+が拾いすぎます。そのため、位置だけから見たBIPリスクや平均的な打球価値を使い、インプレー結果のノイズを抑えます。Location+は結果のrun valueそのものではなく、位置だけから期待される価値を見る指標です。
読み方は、100が平均付近、105以上が良好、108から110で上位級です。Location+が高い投手は、ストライクを投げるだけではなく、カウントや球種に対して相手が打ちにくい場所、見逃しやすい場所、手を出しにくい場所を選べている可能性があります。
Pitching+
Pitching+ は、Stuff+ と Location+ に、投球の総合的な価値を補う要素を加えた100基準の総合指標です。球が強いだけでも、場所が良いだけでもなく、実際に打者を抑えやすい投球パッケージになっているかを見ます。
Pitching+ は単純平均ではありません。Stuff+で見ている物理特徴、Location+で見ている位置とカウント情報、さらに球種ごとの残差的な投球価値を合わせ、失点抑止に近い方向へブレンドします。球質の強さ、コマンド、球種設計、結果との整合性を一つの指標に圧縮するイメージです。
主に使う特徴量
Stuff側では、球速、回転数、腕側横変化、縦変化、変化量の大きさ、球速あたりの回転、球速あたりの変化量、速球基準の球速差、回転差、横変化差、縦変化差を使います。Location側では、plate_x、plate_z、腕側横位置、横位置の絶対値、ゾーン相対の高さ、ゾーン中央からの距離、ゾーン内外、カウント、投手左右、打者左右、同左右対戦かどうかを使います。
Pitching+が高い投手は、球質と場所のどちらか一方だけでなく、投球全体として打者の選択肢を狭められている可能性があります。Stuff+が高くLocation+が低い投手は、素材は強いが失投やカウント作りに課題があるかもしれません。Location+が高くStuff+が平均的な投手は、球質で圧倒するより、狙いどころと配球で価値を作っている可能性があります。
Plus 基準
Plus系指標は100が平均付近です。10ポイントが必ず同じ得点価値差を意味するわけではありませんが、100からどれだけ離れているかで大まかな層を把握できます。
| 値 | 読み方 | 補足 |
|---|---|---|
| 95未満 | 平均より下 | 球種別、役割、サンプルを確認したい領域 |
| 98-102 | 平均帯 | リーグ平均付近。ほかの指標との組み合わせが重要 |
| 103-105 | 良好 | 主力投手の武器として十分に見られる水準 |
| 106-110 | 上位級 | NPBの現在分布ではかなり目立つ領域 |
| 110以上 | エリート級 | 球種別では強力な武器、全体値ではリーグ最上位級 |
2026年6月19日時点のNPB Scholar投手データでは、20イニング以上でStuff+の上位10%が107.7、上位5%が109.7、Location+の上位10%が107.6、上位5%が108.8、Pitching+の上位10%が105.9、上位5%が108.4でした。MLB型の目安で110を超えることだけをエリート条件にすると、NPBの現在分布では少し厳しめになります。
Plus 相関
相関は、Plus系指標が他の結果指標やプロセス指標とどれだけ同じ方向に動いているかを見る表です。+1に近いほど同じ方向、-1に近いほど逆方向、0に近いほど線形関係が弱いことを意味します。wOBA、xwOBA、FIP、Run Value allowed のように低いほど良い指標では、Plus系との相関はマイナス方向が望ましい読み方になります。
| Plus指標 | wOBA allowed | xwOBA allowed | FIP | xFIP | K-BB% | Whiff% | CSW% | Pit WAR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Stuff+ | -0.210 | -0.232 | -0.242 | -0.312 | +0.382 | +0.442 | +0.295 | -0.094 |
| Location+ | -0.239 | -0.192 | -0.231 | -0.209 | +0.145 | -0.071 | +0.002 | +0.363 |
| Pitching+ | -0.301 | -0.299 | -0.338 | -0.393 | +0.427 | +0.357 | +0.267 | +0.115 |
NPBの現在データでは、Stuff+はWhiff%やK%と強く結びつき、Location+はBB%の抑制やPit WARとの関係が見えます。Pitching+はwOBA、xwOBA、FIP、xFIP、K-BB%の複数指標でバランスよく相関が出ています。これは、球質だけでも位置だけでもなく、両方を合わせた投球品質が失点系指標に近づくためです。
| 指標 | Run Value allowed | wOBA allowed | xwOBA allowed | Whiff% | CSW% | FanGraphs系指標との一致 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Stuff+ pitcher overall | -0.375 | -0.376 | -0.507 | +0.545 | +0.514 | +0.885 |
| Stuff+ pitcher bucket | -0.153 | -0.225 | -0.310 | +0.398 | +0.370 | +0.849 |
| Location+ pitch type | -0.262 | -0.143 | -0.026 | +0.067 | +0.246 | +0.611 |
| Pitching+ pitcher overall | -0.441 | -0.438 | -0.549 | +0.461 | +0.505 | +0.802 |
| Pitching+ pitcher bucket | -0.255 | -0.249 | -0.308 | +0.279 | +0.405 | +0.758 |
MLBの検証では、Stuff+は空振り、CSW、xwOBA allowed と強く結びつきます。Location+は球質を入れないためWhiff%との相関は小さく、Called StrikeやCSW、位置由来のrun valueで意味が出やすい設計です。Pitching+はStuff+とLocation+に残差的な投球価値を加えるため、wOBA allowed、xwOBA allowed、Run Value allowedとの相関がより強くなります。
実戦での読み方
一つの指標だけで決めない
指標は選手を見るための補助線です。OPSが高い打者でも、wOBAやxwOBA、三振率、打球の質を見ると中身が違います。FIPが良い投手でも、被打球が強い、球種が少ない、登板役割が限定されている場合があります。まず全体像を見て、次に原因を分解する流れが有効です。
打者なら、OPSとwOBAで結果の攻撃価値を見て、xwOBAで内容の持続性を見ます。HardHit%、Barrel%、SweetSpot%で打球の質を確認し、K%、BB%、Chase%で打席プロセスを確認します。最後にBat WARで、出場量とポジションを含めた合計価値を見ます。
投手なら、ERAで実際の失点、FIPやifFIPで三振、四死球、本塁打、内野フライを中心とした内容、xwOBAで被打球を含む期待値、Stuff+で球質、Location+で投球位置、Pitching+で総合品質を見ると、かなり立体的に把握できます。
サンプルサイズを必ず見る
短期間の数字は大きく揺れます。特にBarrel%、xwOBA、Location+、球種別Stuff+、救援投手のWARは、少ない打球や少ない投球で見た目が大きく変わります。順位表では、打席数、投球回、投球数、球種使用率を合わせて見ることが重要です。
小さなサンプルでは、数字を結論ではなく仮説として扱うのが安全です。なぜ高いのか、どの球種が支えているのか、対戦相手や球場の影響はないかを確認していくと、指標がより使いやすくなります。
高い数字と良い選手はいつも同じではない
Plus系指標は投球の質をよく表しますが、実戦の価値は登板量、耐久性、対戦順、配球、守備、球場、チーム事情にも左右されます。Stuff+が高い投手は魅力的ですが、四球が多い、同じ球に偏る、左打者に弱いといった弱点があれば、成績に直結しないことがあります。
逆にPlus系が平均付近でも、優れた配球、打者ごとの攻め方、ゴロ管理、走者を置いた場面の粘りで結果を残す投手もいます。指標は選手の説明を始める場所であり、終わらせる場所ではありません。